マイノリティ・リポート
監督 /スティーブン・スピルバーグ
上映年/ 2002.12.07
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近未来を舞台としたサスペンスドラマ的内容のスピルバーグ作品。
ハリウッド映画で近未来を舞台とした作品の近未来像の嘘臭さ、安直さは相変わらず。
もちろん、娯楽映画なのだから、その演出のための未来像である事は理解しているのだが、20年前から殆ど変わらない未来像というのはどうも。
未来と言えば、ガラス(または透明素材)的質感と金属的質感と発光の素材を元に構成される品々のオンパレード、技術の無駄遣いにしか見えない最新技術、デザイン優先で機能しそうもない乗り物、その全てからこの映画も逃れられていない。
例えば、トム・クルーズが操作するイメージビューワは、トム・クルーズの手の動きを感知して操作するインターフェイスなのだが、未来において現在のマウス以上に大きな動作を必要とするデバイスが使われている訳がないし(3D画像空間内操作のデバイスとしては有用だと思う)、空を飛んでいたホバーも、あの形状では安定した飛行も着陸も困難であるようにしか見えない。
透明(ガラス?)素材のメモリーカードもモニタも、無理に未来感を演出しようという意図ばかりが目立つ。
自動車のデザインも同様だ。
それでも、この映画の都市交通システムである「マグ・レブ」に関してだけは、将来実用化してほしいと思えるものではあった。
他に、技術的に可能でも絶対に実用化しないであろうものは「網膜スキャンで得た個人情報を元に個人に直接語りかける街頭広告」だ。
特典映像内でスピルバーグが「未来はプライバシー保護が崩壊していて社会的問題になっている」と語っているが、事実上プライバシーがない未来は間違いなく来るだろうが、そのせいで逆に民衆のプライバシーへの意識は高まり、建前上はより強く保護されているだろう未来である事も間違いないだろう。
よって、街頭広告が網膜スキャンで個人情報を得る事などあり得ないはずだ(網膜スキャンによる識別自体は、現在でも実用化されている)。
そう考えると、残念ながら子供騙しの未来像の域を出ていないと思えてしまうのだ。
さておき、次にストーリー上の設定について。
この物語の核である「犯罪予知システム」の発想は、とても考えさせられるものであった。
この物語中では、予知(物語中の設定では殺人のみ予知可能)による予防で未然に防がれた犯罪の刑罰は、実際に起きるはずであった犯罪に対する刑罰と同等の設定のようだ。
この「予知による予防で未然に防がれた犯罪」というのが曲者で、物語中でも「パラドックスだ」という指摘がなされている。
予知された未来を予防という行為で変えられるのであれば、その予知自体が不確実で曖昧なものと言えるはずだ。
要は、パラドックスが生じるという事は多様性があるという事であり、犯罪予防という行為による干渉以外でも、何らかの因子の干渉によって予知とは違う未来があり得る事の証明となるはずなのである。
よって、現実に同様のシステムが実用されたとしても、予知によって未然に防がれた犯罪を裁く事は難しいだろう。
この物語においても、結果的にそのシステムは廃止される事になる(この場合、予知者の人権の問題もあると思うが)。
こういうタイムマシン系や予知系のパラドックスが発生するストーリーは、考えれば考えるほど思考が循環してしまうが、それでも考えることは楽しい。
結論として、ストーリー的にはあまりひねりのないサスペンスではあるが、その分わかりやすく楽しめるとも言えるし、またドラマ的な不足分を映像で補っているとも思えるので、見て面白くないとは思わないだろう。
また、見終わった後で、この物語上の設定について考えてみると、映画のストーリーよりも楽しめる、そんな作品であったと思う。
クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイヤ
監督 /マイケル・ライマー
上映年/ 2002.10.12
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トム・クルーズやブラッド・ピットなどの豪華キャストが出演した「 インタビュー・ウィズ・ヴァンパイヤ」の続編。
続編とは言え、前作のキャストの出演は一切なく、またストーリー的にも繋がっていないと思える箇所が多々あるので、完全な続編として期待して見ると肩すかしを食らうので注意が必要だ。
実際、淡々としつつも複雑に展開していった前作に比べて、派手だが単純に感じる今作は、僕的にはこのシリーズの良さを殺してしまったように感じて、トム・クルーズよりもレスタト役にはまっていたスチュアート・タウンゼントが良かっただけに残念だった。
また、キャストに関して、前作と今作に共通して出番があったのはレスタトとアーマンドだけなのだが、このアーマンドのキャスティングが前作と今作で違い過ぎているのが、とても気になった。
キャストが変わるのは仕様がないと思うが(前作ではアントニオ・バンデラスだったので)、もう少し似たテイストを持った役者をキャスティングしてほしかった。
一応、シリーズモノなんだし。
それと、シリーズモノとして見続ける喜びを与えてくれるシーンが一切なかったのも、ちょっとサービス不足のように思えた。
例えば、前作のキーマンだったルイを、レスタトとアーマンドの会話の端にでも出してくれるとか、そういう見続けている人向けの内容が1シーンぐらいあっても良かったのでは、と。
総論としては、キャスティング云々は抜きとしても、ヴァンパイヤという異常な存在を淡々と綴るという妙によって素晴らしい作品となった前作には敵わないとしても、前作を見て少なからず面白いと思えた人であれば、見て損はないだろうと思う(得とも思えないかもしれないが)。
オータム・イン・ニューヨーク
監督 /ジョアン・チェン
上映年/ 2000
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美形で社会的地位もある未婚の中年プレイボーイ(リチャード・ギア)と、若く真っ直ぐな性格の薄命美女(ウィノナ・ライダー)の、薄命で有限であるが故の凝縮した時間を描いた恋愛物語。
ストーリーとしては、特筆すべき点のない平凡な作品だ。
お涙頂戴系のストーリーとしても成立しているとは思えなかった(泣けなかった)。
しかし、興味深い部分が三点ほどあった。
まず一つは、映像(色)。
この映画では、どうやら綺麗な色で魅せる事をテーマとしているようで、タイトル通り秋の紅葉の色を筆頭に、料理の色、夕焼けの色など、彩度を高くした濁りのない鮮烈で新鮮な色を画面に映し出している。
もう一つは、中年プレイボーイの「弱さ」の描き方が秀逸だった事。
彼は、金も女も仕事も何不自由無く生活しているいい歳の大人なのだが、とても薄っぺらな人間として描かれている。
現実に沢山いる「弱い大人」の典型は、自分が傷付きたくないが為に、また自分の弱さを自分自身から隠す為に、長年意図的・無意識に関わらず作ってきた沢山の「壁(または殻)」に覆われている為に、他人に、また同時に自分自身にも、晒け出せる部分の極めて少ない人間になってしまっている大人だと僕は思っている。
故に弱い大人は、接していて「人間として実の薄い人間」として感じられるものなのだ。
そういう意味で、この中年プレイボーイは、少なくとも物語中盤までは正にそのように描かれており、見ていて不快なまでに見事に「弱い大人」として認識させる事に成功している。
最後の一つは、作品中に出てきた台詞。
中年プレイボーイはシェフを生業としており、その彼に彼女が「食にどんな意味が?」という哲学的な質問をするシーンがあるのだが、その問いに彼は「食とは、あらゆる美なるモノの中で唯一、身も心も満たすモノだ。」と答える(日本語吹替版の台詞。字幕版では非常に凡庸な言葉に訳されている。)。
とても素晴らしい表現だと思った。
全体的には凡庸な作品と言えるので特に薦められないが、部分的にではあるが興味深い部分のあった作品だった。
リターナー
監督 /山崎貴
上映年/ 2002.08.31
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金城武主演の邦画。簡単に説明すると、ターミネーターのストーリーと、インディペンデンス・デイの宇宙人・宇宙船と、マトリックスのアクションを3つ合わせて6で割った映画。
複雑に説明しても同様。
3つ合わせて3で割れないところが日本映画らしくて辛い。
実写の邦画とアニメの邦画において評価に大きな開きがあるのは、明らかにストーリーにあるように思う。
この映画も同様に、もしこれがアニメ映画としての企画であったとしたら、たぶんこの程度の安直なストーリーでは制作する段階まで行かないだろう。
もっと練れば、もう少しは面白くできるだろうし、そうすべきであったはずだ。
あとラストだが、ちょっと都合良くまとめすぎかと思った。
パラレルワールドがない設定だとすれば、彼女は未来に帰るのではなく存在が喪失するとすべきだし、パラレルワールドがある設定だとすれば、彼女は現代に存在するが、彼女を戻す意志は未来に存在しないはずじゃないだろうか。
彼女が初めてのタイムトラベラーなのだとしたら、事が片づいた後の自分がどうなるかわからない不安を描く伏線があって、ラストで「私、やっぱり消えちゃうみたい…」みたいな、未来は救えても悲しい結末というようなストーリー展開も悪くなかったんじゃないかと思ってしまう。
とにかく、マトリックスのコピーと誰が見ても思う映像とアクションシーンについては、コピーとはいえよくやったとも思えるが、簡単で誰にでもわかりやすいストーリーについては呆れるばかり、そんな映画だった。
ジュブナイル
監督 /山崎貴
上映年/ 2000
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SF邦画。ストーリー的には安直なSFマンガで、子供向けアニメとしてならありがち過ぎる内容なのだが、それを実写でやっているところにこの映画の魅力がある。
ハリウッドの大作SF映画のVFXと比べるとチャチな映像なのだが、そういうところから、監督が「やりたい事やっちゃいました」という精神で作った趣味の作品ぽく感じられて、見ていて心地よいのだ。
また、監督の少年時代の夏休みの美しい思い出を映像にしたような情景シーンも多く、監督と年代が近いせいか懐かしさを満喫できて良かった。
冒頭のタイトルが出る草原を少年達が駆けるシーンは、この映画の最高のシーンであり、特筆モノだろう。
余談だが、この映画で少しだけ描かれている未来像は、先に挙げた「マイノリティ・リポート」のような陳腐で安直な未来像ではなく、現代の延長にある未来像をきちんと描かれていて、とても良かった。
また、タイムマシンがドラえもんに出てくるような便利なモノではなかったり、ワームホールを利用するという現代の学術的に理論上考えられている方法を名称だけでも使って描かれている点も評価したい。
ちなみに、ジュブナイルとは少年・少女向けの本の事。
エボリューション
ボーン・アイデンティティー
監督 /ダグ・リーマン
上映年/ 2003.01.25
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スパイアクション物。
記憶喪失となった特別な教育と訓練を受けたエージェントが主人公という、とってもありがちな設定・ストーリーであり、これで主演がスタローンやシュワちゃんであれば「何度同じ事を?」と問いたくなるところであろうが、マット・デイモンが主演であるが故の意外性が、この映画を凡作から皮一枚抜け出せる要因として感じられたのだと思う。
また、マット・デイモンのアクションシーンでの無駄のないキビキビとした動きに、殺しのプロとしての冷徹さとスリルが存分に感じられ、昨今の重力をとことん無視したワイヤーアクションのバカ映画に辟易していた僕にとっては、諸手をあげて大絶賛したくなるものだった。
アクションシーンだけでも見る価値ありだと思う。
ジョンQ
監督 /ニック・カサヴェテス
上映年/ 2002.11.23
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パッケージにはサスペンスとあるが、ヒューマンドラマだろうと思う。
サスペンスを期待して見るとたので肩すかしをくらった。
この物語は、非常に人の善意と神の奇跡に満ちた物語だと思う。
逆に言えば、非常に非現実的な物語だ。
悪意ある人間、独善的な人間の登場は皆無(物語に支障をきたさないレベルの者は登場する)、そして物語も奇跡のように良い方へとの展開していく。
これが現実であればどうであろうか。
犯人と人質間の信頼関係や交流については、犯人に悪意が無く、目的も誰もが理解できる人道的なものであることから、一種のストックホルム症候群が発生していると考えられるので、その点においてのみ現実的であると思えるが、その他、例えばジョンは早々に警察に射殺されているだろうし(アメリカであれば尚の事)、もし射殺を免れたとしても、息子の心臓が届く事はないであろうと思える。
また同時に、関わる人間の悪意や利己性や独善性によって、ジョンの目的が阻まれるという事も十分にあり得るだろう。
この物語においては、ジョンは神の救い手を待ち、そして願いは叶うのだが、それは現実ではありえない虚構の物語だからこそと思える。
最後にジョンが法廷で無罪とならなかった事だけは、現実感のある展開だと感じて安心さえしてしまった。
というように、現実離れした設定でも世界観でもないのに、見ていてリアリティを全く感じられないのはどうかと思う作品だったのだが、たまには人間の善意と神の奇跡に満たされてみるのも悪くない、かな?
サイン
監督 /M・ナイト・シャマラン
上映年/ 2002.09.21
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「シックス・センス」を脚本・監督したシャマラン監督の最新作。
面白くないとの評を事前に聞いていたせいだろうか、かなり楽しめた作品だった。
全地球規模の危機を、ある特定の一家族のみに絞ってストーリーを展開させていくという手法と、危機の根元である侵略者(?)を具体的に描かない手法が、物語を身近に感じさせる効果になったのかな、と思う。
十分にスリルを感じられたし、この種の危機に出会った際の事を考えさせられるに十分な作りであった。
難を言えば、この物語の陰の生活というべき亡くなった主人公の妻とのストーリー背景だが、はっきり言ってこれらに係わるシーンは無くてよかったように思う。
確かに涙を誘うシーンではあったのだが、本編との絡みにおいての必然性は全く感じられなかった。
同様に、主人公が信仰に回帰するという結末も、無くてよかったと僕は思う。
というのも、このような体験をした事によって得られる教訓は「人間という固有の種だけの神などいない」という事のように思えるからだ。
この映画では、妻の死によって信仰を失い、本編の試練を乗り越えられた事によって信仰を取り戻すという流れとなっているが、ただ単に、この出来事によって人間という種固有の信仰というものを見直すという流れの方が、僕にとっては受け入れられる設定であったように思える。
下手に信仰を絡めた事が、この映画を貶めてしまった要因ではないだろうか。
その点においては、シャマラン監督の「全ての要素が含まれています」というアピールだけが目立ってしまった悪しき要素であると思われた。
とは言え、様々な意味で悪い作品ではなかった。
我々は、隣国からの侵略を含めて、もう少し危機感を持つべきであるという認識を訴えかけられる作品のように僕には感じられた。
チェンジング・レーン
監督 /ロジャー・ミッチェル
上映年/ 2002
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ベン・アフラック、サミュエル・L・ジャクソン主演のサスペンス、もしくはヒューマンドラマ作品。
小さな交通事故をキッカケにはじまる、互いの善意のすれ違いから増幅する敵意による悲劇的展開が連続するストーリー。
一方はエリート弁護士、もう一方は親権係争中でアル中治療中の中年男性という、社会的地位においては正反対の二者なのだが、少なからずの善意を持ち合わせている点において、双方とも庶民的な一市民として描かれている点は評価すべきであると思われる。
そしてジョンQのような奇跡的に良い方向に転がる物語とは正反対に、悪い方へ転がり落ちていく点が、ある意味、見ていてリアリティは感じらる。
だが、何となく中途半端な不快感の残る物語だった。
二者の追い詰められ方が中途半端な生殺しのような感じだったからだろうか。
「微妙~」という、僕が見終わった瞬間に漏らしてしまった言葉が、この映画を評するに最適な言葉のように思う…。
ロード・トゥ・パーディション
監督 /サム・メンデス
上映年/ 2002.10.05
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トム・ハンクス主演の20世紀初頭を舞台にしたギャング映画。
見終えて、物語や設定等に特に興味深い点が残ることはない。
面白くなかったとは言えないが、特に面白いとも思わない、そんな類の映画のように思う。
ただ、安穏としたラストシーンにしなかった事だけは評価できる要素であろう。
ちなみに、この映画は「ギャング映画」と謳っているが、ゴッド・ファーザーやワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカなどを知っている者にとって、そのような期待を持って見ると肩すかしを食らうので、お気を付けを。
ジャスティス
監督 /グレゴリー・ホブリット
上映年/ 2002.09.28
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ブルース・ウィリス(どちらかというとコリン・ファレル?)主演の二次大戦モノ(つーか捕虜収容所モノか?)。
捕虜となった連合軍兵士の捕虜収容所内で起こったある事件を描いている。
上院議員を親に持つボンボン将校、捕虜の責任者である連合軍大佐、収容所内で起こった事件の容疑者である黒人将校、そして捕虜収容所の所長(ドイツ人)など、それぞれの立場の登場人物の思惑が交差し、物語は進んでいく。
パッケージにブルース・ウィリス主演とあったので、凡庸な大作戦争映画と思って全く期待せずに見たのだが、良い意味で大きく期待を裏切られ、久々に面白いと思える作品であった。
軍隊内での黒人に対する差別を描くヒューマンドラマ的側面、事件を追及していくミステリー的側面、登場人物達の様々な思惑によって展開するサスペンス的側面、それらの要素が非常にバランス良く融合し、様々な面で見る者を惹き付ける映画となっているように感じた。
秀作である。
アニマトリックス
監督 /アンディー・ジョーンズ、前田真宏、渡辺信一郎、
川尻善昭、小池健、森本晃司、ピーター・チョン
上映年/ 2003
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タイトルからして、マトリックスの安っぽいアニメ版か、本編とはかけ離れた完全な外伝かと思っていたが、実は深く繋がりのある良質な短編集で、実に興味深い内容だった。
マトリックス三部作を見るにあたって、この作品を見ているかいないかで随分と三部作の評価に差が出るのではないだろうか。
それ程までに、マトリックスストーリーの根本・中核に関わるストーリーや、マトリックス・リローデッドの登場人物の目覚めのストーリー、そしてマトリックス・リローデッドのプロローグ的なストーリーなど、三部作と明確に重なり合っている。
それぞれの作品のクオリティも非常に高く、マトリックス好きは絶対に見逃してはいけない作品だ。
マトリックス・リローデッド
監督 /ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー
上映年/ 2003.06.07
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マトリックス三部作の二作目。
三部作とは言え、ロード・オブ・ザ・リングのように当初から三部制作予定ではなかったため、ある程度キッチリと終わっていた一作目と「終わり方」に大きく差を感じてしまうのが残念。
まぁ、三作目の公開がすぐなので、特に問題ではないのだが…。
ストーリーとしては、前作で名称だけの登場だった「ザイオン」等、前作で触れられなかった根本・核心的な問題に焦点を当てている。
二作目を見ると、一作目が序章という感じがし、とても良い展開になっている証拠だろう。
内容も、人間の存在、機械の存在、そしてそのそれぞれの関係を哲学的な視点から語るなど、子供や、アクション映画を見て痛快な気分になろうと意図して鑑賞した者には理解し難いであろうハイブロー&マニアックさで、一度の鑑賞では台詞の全てを完全には理解できない高尚さによって、そういう部分については非常に興味深く見終える事ができた。
ネオとトリニティのラブストーリーも平行して語られるが、それについては結構ゲンナリだったかな。
トリニティの嫉妬シーンなんか特に。
難点だが、台本のハイレベルに比べてマンネリ化したアクションシーンに割かれる時間が非常に余計に感じた。
相変わらずワイヤーアクションによって非現実的な動きを可能としているが、同時に宙に浮いている分「力が入っていない感じ」を強く感じてしまう。
また、得意のカンフーアクションも、それを助長させているように思う。
僕的にはボーンアイデンティティーのような無駄のない力感あるアクションの方が好きなのだが、どちらにしてもアクションシーンに割く時間は半分で良かったんじゃないだろうか。
結論として、続編なだけに前作ほどの衝撃はないが、間違いなく良作ではあろう。
特にストーリーのマニアックな面は、万人受け主義の特A級ハリウッド映画としては特筆モノだ。
ロード・オブ・ザ・リング~二つの塔
監督 /ピーター・ジャクソン
上映年/ 2003.02.22
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ロード・オブ・ザ・リング三部作の二作目。
ロード・オブ・ザ・リングは、最初から三部作としての作品だったので、一作目から中途な終わり方だったが、二作目は中途な始まりと中途な終わりの作品である。
三部作の二作目というのは、すぐに三作目が見られないと辛いという事を、マトリックス、ロード・オブ・ザ・リングと立て続けに見て痛感した。
それはさておき、この二作目は、一作目に比べて作中に漂う絶望感が希薄になった。
悲観的要素に対する描写が、一作目に比べて少なかったせいだろう。
僕がこの作品に求めるのは、押しつぶされそうになるほどの絶望感と、救いようのない人間という悲観的要素の描写なので、この二作目は物足りなく感じた。
が、決して解決に至る楽観的要素ではなく、逃避的楽観描写であったので、物語的には三作目にキツイ現実との対面が待っているのだろうと期待している。
映像的には、マトリックス・リローデッドのような技術の無駄遣い的な画は限りなく少なく、必要な迫力を必要なだけ映していたように感じた。
見るべき価値のある映像と言っていいだろうと思う。
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
猟奇的な彼女
監督 /クァク・ジェヨン
上映年/ 2003.01.25
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韓国映画。
恋愛映画なのだが、日本の恋愛ドラマのようにドロドロとしたところのないのにも関わらず、起伏のあるストーリーに仕立ててある点は秀逸。
CMを見ていた時は「暴力的な女性との恋愛映画なんて・・・」と敬遠していたが、実際見てみるとサディスティックというほどでもない程度の暴力性と、時折見てとれる女性のか弱い部分が功を奏して「ちょっと変わり者な女性」という程度の印象だった。
メインテーマのように流れるカノンと併せて、見終わって心地良い気分になれた映画だった。
ラスト・サムライ
監督 /エドワード・ズウィック
上映年/ 2003.12.06
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トム・クルーズ主演。
この映画は二点ほど秀逸な点がある。
まず一つ。
今までに見た外国人主演の日本映画や日本人主演のハリウッド映画(あったかな?)は、全て外国人か日本人のどちらかが「お客さん」的に浮いてしまっていたのだが、この映画に限っては双方融合しており、そういう違和感は全く感じなかった。
その点においては秀逸と言ってもいいだろう。
その功績は、きっと渡辺謙の流暢な英語のお陰と言っても過言ではないはず。
トム・クルーズとの英語でのコミュニケーションも、見る側に全く無理なく見せている。
トム・クルーズの話す日本語は辿々しいが、ストーリー上全く問題ない。
もう一つ。
物語の時代背景は明治維新後の不安定な日本なのだが、その日本の描写が実に良く描けている点。
また、日本人でさえ忘れかけている武士道を、丁寧に、理想的に描いている点だ。
この脚本家は、よく日本を理解しているのだろう。
ハリウッド映画にありがちな「そんな日本人いねー」的なものは全くなく、逆に日本の美しさや、武士道の理想像、それらの描写に日本人である自分も感心した。
最初に侍が出てくるシーンを見て、監督や脚本家の侍に対しての畏怖が感じられた点も特筆ものだろう。
時代劇が散在している日本においても、あれほど侍の存在感を抽出したシーンは見たことがない。
ストーリー的には並なのだが、そういう描き方については見るべき価値が十分あると思えた映画だった。
ほしのこえ
スワロウテイル
監督 /岩井俊二
上映年/ 1996.09.14
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随分前の作品だが、最近見たので。
僕の大好きな岩井俊二監督作品。
実写邦画としては、映像・脚本・演技、どれをとっても最高レベルだと思われる良作。
円都(イェンタウン)という架空都市が舞台となるが、この円都は、バブルが弾けずに突き進んでいった日本の姿そのものとも言える。
そういう意味で、IFモノの近未来ストーリーとしても見ることができるだろう。
何度も見て意味を見出す類の作品ではないと思うが、監督の画作り、三上博史、江口洋介、渡部篤郎、CHARAなどの演技力、それら全てから生まれる圧倒的な迫力と存在感と説得力に、引き込まれまくった作品だった。