Canon EOS 5D Mark II


この1年で、気軽なスナップから極寒での使用の他、アフリカ旅行などにも持ち出し、5D購入後の1年間ほどではないが公私それぞれにそれなりに使ったと思う。
それで、これまでに5D Mark IIを使用してきて感じた事を少し書きたい。

ISO6400までは実用域

もっとも使用した印象があるのはISO200〜2000辺りのように思う。
明るい屋外日中のシーンでも、シャッタースピードの余裕なども考慮してISO100よりも200をデフォルトとしていた。
屋内夜でタングステン光のみの暗いシーンなどではISO6400をマックスに、シャッタースピードと相談しての設定。
最初の数回の撮影ではオートISOも使っていたけど、やはり意図しない設定になるケースもあって、基本的にマニュアルで設定する事にした。
止むに止まれずISO128000〜25600も数度使用したけど、やはり写ったというだけで記録にはなるけど作品にはならない。

5DがISO800がマックスだと思って使用していた事を考慮すると、明らかに余裕が出来た事や、撮る事を諦めずにいれるシーンが増えた事は、本当に素晴らしい事だと思う。

5Dには戻れないと感じてしまう使い心地

見た目も、質感も、シャッターボタンの感触も、パッと見やちょっと触っただけで違いを感じられなかったけど、実際にしばらく5D Mark IIを使い続けた後に5Dを使用すると、使用する気持ちを削がれる程に古さやもっさり感がハッキリと感じられた。
特にシャッターボタンの感触の違いは大きいかもしれない。

他、ブツ撮りや不動産物件の撮影などで活用しているライブビュー機能については、その有無によって撮影効率が大きく異なる。
また、ファインダーを覗いてのフレーミングを『1人称の視野』によるものだとすると、ライブビューでのフレーミングは『モニターを観ながらの客観的な視野』でのものなので、感覚がずいぶんと違う。
なので、特に風景撮影の際にファインダー越しのフレーミングに迷った時などでもライブビューを使ったりできるのも、5D Mark IIを使用するにあたっての僕にとってのメリットだ。

困った時のsRAW1

1枚28MB前後のデータ量はハンパないけど、当初はフルサイズのRAWで撮っていた。
撮影時のCFカード容量の圧迫については、それなりの容量のCFカードを持っているので、あまり問題視する事なく使えていた。
だが、アフリカ旅行では最終日を目前にして全てのカードがフルになってしまった。
そうそう行く機会がないであろう土地だったので、とにかくシャッターを切りまくっていた事が原因なのだけど、それを考慮して用意していたはずだったのに足りなくなったのだ。
なので、まずはミスショットを探しては地味に消去し、最終日の撮影は全てsRAW1を使用した。

最終日は、そもそも特に撮影シーンがあった訳ではないし、あっても後々A4以上でプリントする事は間違いなくないであろうシーンだけだったので、結果無問題。

それ以降、気軽なスナップなどではsRAW1を結構使っている。
17MB前後のファイル容量は、撮影後にファイルを保存しておくHDDにとっても優しい。
正直一番キツイと感じていたのがHDD容量の圧迫だったから。

その他

高輝度側・階調優先機能は数度使用したけど、まだそれによって救われたと感じるには至っていない。
必要かもしれないというシーンではその機能の存在を忘れて設定し忘れたり、逆に大して必要ないだろうと思われるシーンで試しに使ってみたりなど、有効に活用していないからだ。
ただ、期待だけはしている。
今後、少しでも階調を稼ぎたいと思うようなシーンでは、検証を含めて使ってみたいと思っている。

2010年3月著



Nikon D3以降の高感度ノイズ耐性能の流れに憧れを感じ、また3年使い続けてきた5Dへの信頼を引き継いでいるという想いから、発表前から物欲と使用欲を駆り立てられまくった5D後継機。
職場での使用で度々撮影のダブルブッキングがあったり、35mm判フルサイズ撮像素子が生み出す動画への期待、そして微妙に暗いシーンでの撮影を余儀なくされる結婚式の撮影依頼など、僕の堅いサイフの紐を緩ませる言い訳が重なった事で購入に至る。

名機の後継として

発売後3年もの間後継機を出さず、それでも売れ、それでも評価が高く、それでも最新機種との画質比較でひけをとらなかった名機EOS 5D。
その後継機として、5D発売後2年頃から噂が飛び交っていた。
特に、発売後2年半であった2008年春頃は、信憑性が高く、多くの人が口を揃えて発表されると盛り上がり、発表されずにゴールデンウィークに突入してしまった際のCanonへの悲痛な訴えや罵倒は記憶に新しい。

その間に、高感度ノイズ耐性のパラダイムシフトを起こしたNikon D3、D700、フルサイズ参入3番手となるSONYのα900、一眼レフでの動画撮影を可能にしたD90などの革新が続いた。

正直、D90の前に発表されればもっと大きく話題になっただろうが、それでも名機の後継機として多くの新機能と共に発表される事となった。

進歩した高感度ノイズ耐性

5Dの時点でも高感度ノイズ耐性は優れていたが、D3以降のトレンド(最高ISO25600)にキッチリ合わせてきた。
さらに、5D同等の1200万画素クラスのD3やD700と違い、2000万画素超クラスで。
画素数が増える程に厳しくなるのが高感度ノイズ耐性なので、これは評価すべき事だろう。
実際にISO12800以上で撮った事は今のところないが、結婚式での撮影ではISO2000を常用し、仕上がりに殆ど不満がなかった事(5DではISO1600は色々と仕上がりを諦めながらの使用だった)から、ISO3200、もしくはISO6400を常用域とするCanonの発言は信用に値する。
レンズキットとして同時に入手した24-105mm IS USMとのコンビで、薄暗い環境での撮影に腰が引ける事はなくなった。

革新的な動画撮影機能

まだ試用段階ではあるが、動画機能も注目に値する。

100万円の民生用ビデオカメラ最高機種はもちろん、ウン千万円の業務用ビデオカメラでさえ半分以下の撮像素子サイズとする35mm判フルサイズ撮像素子から吐き出される動画は、豊富な交換レンズ群と併せて間違いなく映像業界に新たな潮流を作るであろうものだからだ。
セミプロ級のアマチュアショートムービー作家など、これまで撮像が小さいばかりに撮ることができなかった被写界深度の浅い映像が手軽な価格で手に入ってしまう。

発表直後は否定的な意見が目立つ状態だった。
実写とは言え、『動く』か『止める』かは大きく違うので仕方ないのだろうが、保守的な人々からの想像力に欠けるバッシングが相次いだ。

『コンデジ(コンパクトデジカメ)の動画もイマイチだし、動画はビデオカメラに任せて一眼レフカメラは静止画の機能向上だけ追求すればいい。』

コンデジユーザーが言うなら理解できるが、デジタル一眼の、それもわざわざフルサイズ撮像素子のユーザーや、それを求める人が上記の発言をするのは、想像力に欠けると言われても仕方ないだろう。

そもそも、コンデジはもちろん、APS-Cよりもフルサイズが優れているのは、画素ピッチの余裕からくる高感度ノイズ耐性と、被写界深度の浅さなどのはず。
だから、それらのメリットが動画にも享受されると容易に想像できるのに、コンデジやビデオカメラと同列にしか扱えないなど、お粗末過ぎるだろう。


もちろん、メリットばかりではない。
というよりも、被写界深度が浅いというメリットは、シーンによってはデメリットとなる。

正確なピント合わせが必須となるからだ。
子どもの成長記録などの用途に気軽に使えるようなものではない。
それに、動画中のフォ−カシング方法であるコントラストAFは、お世辞にも早いとは言えず、第一世代AF並かそれ以下の合焦スピードしか出ないので、チャンスを拾うようなシーンにも向かない。
また、CFのファイルフォーマットであるFAT32で1ファイル4GBまでと制限されているので、HD(1920×1080pixcel)で約12分、SD(640×480pixcel)でも24分で一旦撮影が終了してしまう。

他にも、動画撮影時にレンズのフォーカス音が入る、手持ち撮影し辛いなど、全くもって万能ではない動画機能ではあるが、オモシロイ機能である事は間違いない。

僕にとってのMark II

正直、Mark IIの画像サイズを必要とするシーンは限られる。
多くの撮影では5Dの1200万画素クラスのサイズで十分だ。
だが、使い勝手は間違いなく向上しているので、基本的にはMark IIを使う。
メモリーカードに余裕がなくなれば画像サイズを落として撮影できるし(sRAW1)、逆にサイズが必要なシーンでのみフルサイズで撮るなどの選択肢があるのはイイ事だ。

また、ライブビューも意外と使える。
三脚立てて物撮りする際はもちろんの事、普通の手持ち撮影の際もライブビューでフレーミングすると、特に風景などの撮影の際には仕上がりを冷静に想像できるように思える。

まだ使っていない機能がたくさんあるが、費用対効果としては非常に満足している。
また長い間の相棒となるであろう5D Mark IIは、先代の名に恥じない、名機の立派な後継機だと思う。

2009年6月著